新型コロナウイルスの影響でありとあらゆる学術活動がオンラインに移行していく中、「学会」という組織のあり方が今一度問われています。生命情報科学若手の会では例年「研究会」という伝統的な形式で若手研究者や学生に発表と交流の機会を提供してきました。顔を合わせて議論や雑談を交わすという機会を奪われてしまいましたが、同時にこれまでとは異なる開催方針を模索する好機となりました。本年度はウイルス学若手の会の方々から開催協力のお声がけをいただいたというきっかけもあり、これまでの「研究会」というスタイルから脱却しオンラインならではの「交流会」という形で本年度の年会を開催する運びとなりました。オンライン開催の様子については第12回研究会ページをご覧ください。
特に「交流」という側面に重きを置いておりますので、まだ研究テーマが決まっていない学生さんから現場で活躍する方々まで幅広い層の参加を歓迎いたします。研究室やwet/dryといった分野の垣根を超えて様々な若手人材による交流をぜひお楽しみください。皆様のご参加をスタッフ一同お待ちしております。
10/14 ピッチトークスライド提出方法等について、10月1日(金)と10月14日(木)に参加者の皆様に案内メールを送信いたしました
もしお心当たりがない場合、お手数ですが迷惑メールフォルダをチェックしていただくか、bioinfowakate_staff@googlegroups.comまでご連絡をお願いいたします
9/10 第13回研究会の参加登録を締め切りました
8/2 第13回研究会「生命情報科学✕ウイルス学 若手交流会」のページ(本ページ)を公開しました
9月3日(金)【延長】9月10日(金)までに、参加登録フォームより参加登録をする
締め切りました。
10月15日(金) までに、ピッチトークで用いるスライドのPDFデータをアップロードする(アップロード先は後日案内)
第13回研究会には、どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。
*ただし、研究会の趣旨に反する方のご参加はお断りする場合があります。
*登録人数によっても、登録期日等は変更させていただく可能性がございます。
本年度はオンライン開催の強みを活かし「ディスカッション」を主軸においた研究発表を行っていただきます。参加者にはまず自己紹介や簡単な研究紹介などを「ピッチトーク」という形で短く発表していただきます。その後、「グループディスカッション」という形で少人数グループの中でじっくりと時間を取り、研究の詳細についてお話いただき密なコミュニケーションを取れようになっています。またプログラム外ではありますが懇親会の時間においてもオンライン会議ツールを使用した研究に関するディスカッションを行っていただけるような環境をご用意いたします。
Pitch Talkとはエレベーター・ピッチというプレゼン方式を元にしたライトニング・トークです。エレベーター・ピッチは「エレベーターで一緒に乗っているわずかな時間に、周囲の人にアイデアや商品を売り込む」というものです。研究についてのみならず、ご自身のスキル・興味・趣味といったオーソドックスな研究発表に囚われない内容をぜひお話してください。発表時間は2分を予定しています。スライドは事前にご提出いただき、スタッフがまとめて操作いたします(提出締め切り10/15)。
スライドのサンプルはこちら 。
少人数のグループに分かれ、研究発表・ディスカッションを行います。全部で6回行われ、少人数ならではの濃いディスカッションを多様なバックグラウンドを持った参加者と行うことができます。研究発表を行うにあたっては、ご自身の研究内容を他の参加者に円滑に伝えるために4枚程度のスライド資料のご準備を推奨しております。
参加者の方々で初日に4~5人からなるチームを結成し、会期を通して新たな研究について考えるグループワークの時間を設け、最終日(3日目)に研究提案についてプレゼンしていただきます。研究テーマは当日までに募集したウイルス学、生命情報科学の未解決問題のクリアを目標とします。新たに集まるそれぞれの参加者の力を総動員して世紀の難問に挑みましょう。
未解決問題の例
配列からの遺伝子機能予測はどうすれば可能になるか?"
Nextパンデミック予想"
バイオインフォのソフトウェアの停滞感 …など ※アイデアは広く募集中です(投稿フォーム)
優れた研究提案を行ったチームへの「ベストNGS賞」、活発な議論に寄与した人への「ベストコメンテーター賞」などの表彰制度も準備し
ています。
※詳細については追って、スタッフによるチーム形成からプレゼンまでの一連の流れのシミュレーションの様子をアップいたします。
生命情報科学の研究は、キャリア形成にどのように関わっていくのか。民間、アカデミアで今をときめく登壇者の方々に、自分のキャリア選択の経緯や考え方、生命情報科学研究との関係を語っていただきます。
講演タイトル
ウイルスは細胞外にデポジットされた細胞制御“自己複製子”
講演概要
ウイルスは、数ある“病原体”の一つとして捉えられています。しかし、いわゆる病原体としての活動が明確には認識されない場にも、ウイルスが存在し増殖していることが、ここ数十年のウイルス研究により明らかになってきました。しかも、その存在量や多様性は、我々の知る病原性ウイルスを凌駕する可能性もあります。従来から続く“病原体”としてのウイルス像だけでは説明できない事実が蓄積しつつある今、その存在を内包した新たなウイルス理解が必要となっています。
発表者は、様々な生物に潜むRNAウイルスを網羅探索する手法を確立し、特に真核生物細胞と共存状態にあるRNAウイルスが普遍的に存在することを示してきました。現在、このようなRNAウイルスの機能や、宿主集団内や環境中での動態から、その存在意義に迫りたいと考えています。本発表では、このようなウイルスが宿主細胞の表現型を変化させるスイッチのような役割を担っているという事例を紹介し、 “延長された表現型”を生み出す因子としての側面から、その存在を捉えなおしてみたいと思います。
若手へのメッセージ
最近、自分にとっての研究の意義ってなんだったっけ?と考える機会が増えた気がします。残念ながら、ふつふつとどこからともなく湧いてくる夢で駆動されてきたとは言えない自身にとって、それを明確に説明することはやはり現段階でも容易ではありません。ただ、振り返ってみると、研究が私を駆動してくれてきたような気もします。その意味では、自分が生きがいを実感するための研究ということになります。卵が先か鶏が先か的な変な話ではありますが。
講演タイトル
生きている状態をどのように理解するか ~理論と実験からのアプローチ~
講演概要
生物システムは、様々な環境変化や内部状態の揺らぎの下で機能し続けられる頑強性(ロバストネス)を持つ一方で、環境変化などに対し、適応や進化などの過程を通じ内部状態を柔軟に変化させるという可塑性を持つ。この頑強性と可塑性が両立できるという性質は、我々の知る人工システムとは本質的に異なる点であるが、その理解には至っていない。こうした頑強性や可塑性を理解するためには、生物システムの「状態」を適切に記述する体系が必要となるはずである。
本講演の前半では、理論解析と計算機シミュレーションに増殖する細胞におけるマクロ状態論[1、2]について紹介し、進化的安定性により取り得る細胞状態が低次元のダイナミクスに拘束されることなどを論じる。後半では、その実験的検証に向けた大腸菌進化実験について紹介をする[3]。ラボオートメーションを活用した全自動培養システムを用い、100種類程度の異なるストレス環境下で進化実験を行ったところ、大腸菌のとり得る表現型は比較的低次元の状態空間に拘束をされていることが示唆された。さらに、このようにして抽出した低次元の構造に基づいて、選択圧にフィードバック制御を加えることにより、進化軌跡を制御する実験手法を構築している。これらの結果を基に、生物システムの状態論がどのように可能であるかを議論したい。
[1] Furusawa and Kaneko, Phys. Rev. E 97:042410 (2018)
[2] Kaneko and Furusawa, Annu. Rev. Biophys. 47:273-290 (2018)
[3] Maeda et al., Nature Comm. 11(1):5970 (2020)
若手へのメッセージ
実験技術の進歩によって大規模なデータが得られるようになり、またシミュレーションや機械学習などの技術も進んで、かつては妄想であったことが出来る時代になったと思います。そんな中で楽しい研究をするためには、一つの分野を極めるだけではなく、色々な分野をちょっとずつでも触れる経験を持つのが良いかなと感じています。この若手の会はそうした雰囲気を持ったところだと想像していますが、そんな議論もできたら良いかなと思います。
お問い合わせはbioinfowakate_staff@googlegroups.comまでお気軽にご連絡ください。