生命情報科学若手の会
第14回研究会
研究会の概要
こちらのページをご覧ください。
日程
日程 2022年9月10日(土)~11日(日) 盛況のうちに閉会致しました
開催報告
昨年に引き続きのオンライン開催となりましたが、今年もオンラインならではの参加しやすさを生かして全国津々浦々から様々な研究分野の方にご参加いただきました。特にオンラインで不足しがちな参加者間の交流の側面を重視した企画が中心でした。今年は新しい試みとして、グループワーク企画であるNGS (Next Generation Science)にて招待講演でお呼びした先生方からお題を頂き、その議論が大いに盛り上がりました。みなさまのご協力によりきわめて活発なオンラインでの交流を行うことができ、スタッフ一同感謝しております。参加いただいたみなさまにとって、自身の研究をさらに発展させ、また他の参加者から刺激を受ける機会となったようであれば幸いです。
各企画の開催報告
(1)ピッチトーク
1人1分間で、自己紹介をする企画です。一日目の一番最初に行いました。他の参加者のことを知って、話のネタにしたり、気になる研究テーマの人に話しかけるきっかけにしたりする人が多かったようです! スライドの例はこちら。
(2)研究ディスカッション
各参加者の研究を発表しあう企画です。4~5人のグループに分かれてそのうちの2~3人が各20分ほど発表し(他の参加者との議論も含む)、それを2日間でグループを変えながら6回行いました(一人当たり合計3-4回発表)。少人数での発表なので、経験の浅い学生でも異分野の発表に質問しやすく、どのグループでもディスカッションが活発に行われていました!また、研究を始めて日が浅く、明確な結果が出ていなくても問題ありません!実際、学部生の多くは研究プロポーザルを発表していました。
(3)招待講演
今年は招待講演として、理化学研究所の海津先生、東京大学の市橋先生にご講演いただきました。45分間程度のご講演の後、15分程度の質疑応答という形式でした。Slackを使うことで軽い質問・反応はリアルタイムに参加者で共有され、どちらの先生のご講演も時間ギリギリになるほど質疑応答が盛り上がりました。
(4)NGS
第14回の目玉の企画とも言えるのがNGS (Next Generation Science)です。この企画は、グループごとにディスカッションを行い、生命情報科学での未解決課題に対して新たな研究を提案するというものです。今年は初の試みとして、スタッフだけでなく招待講演でお呼びした先生方にも未解決課題をご提起いただきました。各グループにはバックグラウンドも学年も異なる6名程度のメンバーが配属され、合計3時間程度で密なディスカッションを行いました。ディスカッションの中では何が未解決なのかを具体的に明確にし、その解決案を全員で考えました。これらのディスカッションを通じて考案された解決策をスライドにまとめて10分程度の発表を行い、参加者同士で質疑応答を通じて更なる議論へと繋がりました。
当日の課題紹介スライド(1例)はこちら
当日の発表スライド(1グループの例)はこちら
Slack上での参加者の反応 (→)
当日話し合われた未解決課題(1グループの例はこちら)
生命進化の表現方法 (市橋先生よりご提起)
系統樹は水平伝搬は表せないし、遺伝子毎に違う結果になりうるし、形態に基づく系統樹とゲノム情報に基づく系統樹を一致させられない。化石情報も入れられない。ウイルスも入れられない。生物の関係性を示す方法として系統樹よりいい方法はないのか?
生命情報の起源(市橋先生よりご提起)
生命の起源において、情報はいつ、どうやって生まれたか?Evolution 2.0 AI & Origin of Life Challenge, $10M Prize | HeroXで言われているように、その謎を解くとAIの発展をもたらすのか?
ゲノム情報だけからわかること(海津先生よりご提起)
我々はゲノム情報だけからどこまでその生命を理解できるようになったのだろうか。例えば未知のゲノム配列を手に入れた時、どんな生き物でどんな振る舞いをするのか分かるだろうか?
ゲノムの「設計」のために(海津先生よりご提起)
ゲノム配列を1塩基ずつフルスクラッチに合成する技術を手に入れた時、どんな新しい細胞や生き物を創れるようになるのだろうか。生命を設計するにはどんな技術が必要だろうか?
研究者の研究者による研究者のための政策形成(若手の会スタッフより提起)
日本の科学力の低下に対する危機感がより一層高まる昨今、特にSNS上では研究者間でも頻繁に議論が為されている。この議論、もっと深めて政策として形にしてみたら…?研究者自身が考える日本の科学政策の問題点とは何か。そしてその解決策とは?
コロナ禍・アフターコロナでの研究者のサバイバル戦略(若手の会スタッフより提起)
コロナ禍において研究室内の活動がしづらくなったり学会がオンライン化されるなど、私たちの研究生活は大きく変わっている。困難もあれば新たに学びを得た部分もあるが、コロナ禍やこれからのアフターコロナの世界で研究者はどのように振る舞うのが良いだろうか?
表彰
本研究会では、参加者の投票により、研究会全体で特に議論を盛り上げてくださった方をBest Activator Awardとして表彰いたしました。
以下が受賞された方々です。おめでとうございます!
Best Activator Award
新井悠也さん (筑波大学)
柴山竜三郎さん(北海道大学)
内田唯さん(理研)
久保顕登さん (早稲田大学浜田研)
林玲奈さん (九州大学システム生命科学府一貫制博士課程1年)
Zoomでの全体集合写真(解像度を落として掲載しております)
参加者レポート(受賞された皆様に書いて頂きました)
新井悠也さん (筑波大学)
今回はBest Activator Award というすばらしい賞をいただき光栄です。年に1度の研究会ですからどうせならエネルギーを使い切ろうとし、たくさん質問・回答・コメントをしたのが結果的に受賞へとつながったのだと考えています。今回が初めての参加でしたが、本研究会は学会とは質問やコメントのハードルが低い一方で発表内容や質問内容などは学会発表さながら、レベルの高いものであると感じました。加えて、2日間の開催という濃密なスケジュールで複数のディスカッションを挟むことにより、自分の研究に対する理解や質問力など、研究に関わる様々な能力が向上したと感じました。今回様々な企画を通じて築いたつながりは今後も強く続いていくものであると感じています。このような機会を与えてくださった運営の方々、研究会を作り上げている若手の会の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
柴山竜三郎さん(北海道大学)
この度はActivator Awardを頂戴し光栄です。今回私は初めての参加でしたが、大変楽しめました。今回の研究会では興味深い研究内容を聞けて、実際に今後の私の研究に関わりそうな内容も複数ありました。しかしそれ以上に、優秀な同世代研究者の方々と出会えたことは私にとって大きな実りでした。このような会を企画して頂いた運営の皆様と参加者の皆様に感謝申し上げます。ちなみに写真の右側は、僕の学部の先輩であり若手の会運営メンバーの西村さんに遺伝学会でお会いした時の写真です。今回出会えた皆様、今後ともよろしくお願いします。
内田唯さん(理研)
2日間を通し、とても楽しくお話しさせていただきました。これは魅力的な研究をされている皆様と腕利きの運営スタッフの方々のおかげなのですが、私も多少なりとも賑やかしに貢献できたかなと思うと大変光栄です。この若手の会は「割とインフォを使う生物学をしている人の集い」というフワッとした認識をしていたので、話題が合うか緊張しながらの初参加でした(ちなみに私の専門分野は進化発生学です)。結果的には、会への認識は大体正解、そしてみんなジャンルは違えどもお互いの研究に興味津々という具合でした。これまでのオンライン学会や交流会の経験からはzoom越しにすぐに打ち解けるのはかなり難しいと予想していましたが、運営の工夫のおかげもあり、研究発表でも企画NGS (Next Generation Science)でも多様な専門性と熱いハートによるバチバチ弾けるような議論が展開できました。皆様改めてありがとうございました。よければ来年もお会いしたいです。
久保顕登さん (早稲田大学浜田研)
この度はActivator Awardという身に余る賞をいただき,大変光栄です.本研究会の参加は3度目だったのですが,いつにも増して密度の濃い研究交流・議論ができました.研究ディスカッションでは,参加者同士で異なるバックグラウンドに基づいた多種多様なフィードバックをし合うことができましたし,NGS企画では思いもよらないアイデアが次々と提案されながらもグループ一体となって課題解決に取り組むことができました.研究以外にも趣味や悩み事について気さくにお話しすることができ,オンラインでありながらも強固な関係を築くことができたと信じています.これもひとえに運営の皆様,参加者の皆様のおかげです.本当にありがとうございました.
林玲奈さん (九州大学システム生命科学府一貫制博士課程1年)
今回はこのような賞を頂き光栄です。運営・参加を通じて関わって下さった皆様に感謝申し上げます。自分の専門分野とは異なる分野での同世代との議論は大変勉強になりました。研究ディスカッションや未解決課題に対するディスカッションの企画を通じて、生命情報科学とモデルの関係性を深く考えるきっかけになりました。データとモデルの研究を相互に進めていくことで、より見えない部分を明らかにしていくことができると確信しました。交流をきっかけに、分野融合の研究を進めていきたいです。今回学んだことを自分自身の研究にも活かせるよう精進してまいります。最後になりますが、ご一緒させて頂いたスタッフの皆様、本当にありがとうございました。